映画『色の街』主演 兼 プロデューサー【黒澤優介】インタビュー(前編) 早稲田演劇出身の若手達が作り上げた青春短編映画

小手さんが「役者は待つのが仕事なんだ」と優しく言ってくださって、現場がとても和らぎました

―― 撮影中のエピソードが何かあれば教えてください。

黒澤 今回、小手伸也さんに出ていただきました。
我々スタッフは全員大学生だったので、当時フジテレビの「SUITS/スーツ」というドラマがオンエアされているタイミングだったこともあり、みんな緊張していました。

小手さんが撮影にいらっしゃったのは3日目位で、まだちょっと、現場があたふたしているような時にお迎えする形になってしまい、何より小手さんをお待たせしないようにと、とにかく芝居を完璧に決めなきゃと、プレッシャーを感じていました。

そこで、画とかを作るのも、スタンドインでもう決めてから小手さんに入っていただいたのですが、やはり我々学生なので、ちょっとした段取りのミスとかで時間を押してしまうこともあって。「もうどうしよう」って思っていたのですが、小手さんが「役者は待つのが仕事なんだ」と優しく言ってくださって、現場がとても和らぎました。

小手さんはドラマだと、どちらかというと三枚目というか、面白いキャラクターをやられている印象ですが、現場では、どちらかというと寡黙というか、あまりお喋りをたくさんされる方ではなく、そうですね、お父さんのような印象でした。

―― そもそも、小手さんご出演の経緯はどのようなものだったのですか。

黒澤 小手さんは早稲田演劇の大先輩で、「早大演劇倶楽部」という劇団にずっと所属されていました。その劇団からは、八嶋智人さんや、いろいろな有名な方が出ています。
僕と監督は、隣の「てあとろ50′」っていう劇団で活動していまして、こちらは「キャラメルボックス」や「ラッパ屋」などが出た劇団です。
とにかく早稲田演劇が、30年前とかにはすごく盛り上がっていたんですね。

今はコロナ渦で舞台そのものがが出来ない状況ですが、その前、映画を企画した頃には、残念ながら既に客足は激減していて、どうにかしてお客さんにまず見てもらわなきゃいけないなって考えていました。

そこから、映画という、舞台とは違う媒体で、自分たちの芝居を表現できないかなというところが、まずこの映画の製作を企画したきっかけになります。

そこで、せっかくなら早稲田演劇の先輩に出ていただこうと。どなたにお声がけしようと考えた時、堺雅人さんとかいらっしゃるんですけど、さすがに大物すぎるなと。

当時、小手さんが「コンフィデンスマンJP」でブレイクされたちょうどその後で、小手さんであれば何とかお願いできないかなという、ちょっとずるい考えで小手さんに行き着いたんです。

もともと、小手さんが三谷幸喜さんの舞台などに出られていたのを拝見していて、なんてオーラのある方なんだ、細かいお芝居が本当にお上手な方だなと思っていました。
いつかお芝居を一緒にさせていただきたいな、と思っていた方なので、この機会に、もう小手さんを逆にこちらからお呼びしようと。そんないきさつで決まりました。

小手伸也、森平周監督

―― あまりご予算もない中で呼ぶのは、ご自身たちにもハードルですよね。
いくらでお願いすればよいのか、分からないじゃないですか。

黒澤 とりあえず駄目もとで事務所に電話したら、詳しいお話を聞きたいと仰っていただいて。マネージャーさんとお話させていただいて、それだったらぜひご一緒しましょうという話になりました。本当にもう少ない、もう謝礼みたいな形でお受けしていただいて…。

―― 小手さん自身も、そういう後輩たちの思いにお応えくださった。

黒澤 まさか、インディーズレーベルからオファーが来るとは思わないですよね。しかも、学生の製作なのに。本当にありがたかったです。

―― やっぱり皆さんの若いパワー。プロデューサーとして黒澤さんの行動力。前進させてやるという雰囲気が、すごくいいですね。

黒澤 いかにチャンスを見過ごさないで、行動できるかですね。勉強になりました。

―― 他のスタッフやキャストの皆さんのお話も、お聞かせください。
森平周監督と組まれたのは、どのようなきっかけで。

黒澤 私と劇団の同期で、働きながらシナリオを書いている仲間です。何でも言い合えるような間柄です。

―― ヒロイン役・矢崎希菜さんについてお聞かせください。

矢崎希菜

黒澤 ヒロインオーディションでお芝居を見させていただいて、監督と「この子めちゃくちゃいいね」という話になって、出演していただくことになりました。
当時、彼女はまだ高校生だったので、学校に通いながら撮影に来ていただきました。

セリフがなく、雰囲気で伝えなくてはいけない役どころだったのですが、もう何だろうな、ピンク色のオーラが出ているように思えて、セリフがなくてもちゃんと伝えられる、なんて素晴らしい女優さんなんだと思いました。

―― 安慶名晃規さんについて。

黒澤 残念ながら今は役者を辞めてしまっています。出身地の沖縄に帰って、心理カウンセラーを目指していると聞いています。人の内面みたいなものをよりケアしていきたいとのことですが、それは役者と通じるところがあって経験が生きると思うので、ぜひ頑張ってほしいなと思っています。

―― 楽曲のMomさんについて。

黒澤 Momさんには、主題歌、挿入歌の2曲を書き下ろしていただきました。
もともと森平監督が好きで、これもまた、駄目もとのオファーでした。

Mom

Momさんも僕と同い年、23歳です。最近だとAppleのCMソングとかも手がけている方で、これからどんどん伸びていく方だと思います。

パソコンで楽曲を作られて、新しい音楽のスタイルを確立されている方なので、我々未熟な大学生スタッフキャストとの組み合わせでどうなるのか、すごく楽しみにオファーさせていただきました。

「プライベートビーチソング」という曲を書き下ろしていただきました。
まさに映画とリンクするような曲をご提供いただきまして、初めて聞いたときは、感動で涙が出ました。

―― アーティストの方に自分たちの作品を書いてもらうのは、なんか感動しますよね。

黒澤 わざわざ自分たちのためだけに書いていただいた曲なので、これはもう、映画絶対に成功させなくては駄目だぞという、いい意味でプレッシャーにはなりました。

もう本当に楽曲の力で、結果的に作品を皆様にお見せできるレベルまで持ってこられたのかなと思います。感謝しています。

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