映画『色の街』主演 兼 プロデューサー【黒澤優介】インタビュー(前編) 早稲田演劇出身の若手達が作り上げた青春短編映画

せっかく作った作品が世に出ないことはもどかしく、俳優としてもプロデューサーとしても、なんとか世に出すことが大事だと考えました

―― 今回の作品は、クラウドファンディングで60万円の支援を受けて製作されました。

黒澤 製作費に40万円と予算を決めていて、余りの分は宣伝に回そうと考えていたのですが、結局赤字でした(苦笑)

もちろん目標額は達成できたので、それは本当に、出演者や若手の製作陣に共感してくださった、映画好きの皆さんのおかげです。
まだ名前のない僕たちにお金を入れてくださったことで、皆さん本当に映画が好きなんだろうなって感動しました。

完成披露試写会でお招きしたんですけど、本当に皆さん、しっかり映画をご覧になってくださって、いろいろなアドバイスを言ってくださる方もいらっしゃって。皆さんのおかげで成長をさせていただきました。

―― 当初は劇場公開の予定でしたが、Amazonプライム・ビデオでの公開になりました。いきさつをお聞かせください。

黒澤 渋谷や吉祥寺のミニシアターを中心に公開をする予定だったのですが、コロナウィルスで延期になりました。学生の製作映画なので、一度このスケジュールが崩れてしまうと、メジャーな作品ですら時期が延びている中、「色の街」を入れるのは難しいと。いろいろな劇場の方とお話しさせていただきましたが、どこもそういうご判断でした。

せっかく作った作品が世に出ないことはもどかしく、俳優としてもプロデューサーとしても、なんとか世に出すことが大事だと考えました。

そこで今「配信ってどうなの」というところから調べて、知り合いを通じて、Amazonプライム・ビデオの配信を取り扱う大阪の配給会社にたどり着き、そこを通じてお話させていただきました。僕らの熱意を買っていただき、無事、配信決定となりました。

―― ここでもまた、黒澤さんの行動力がきっかけになりましたね。「引き寄せの法則」じゃないですけど、それってすごいあると思うんです。

黒澤 「引き寄せ」、実は最近勉強していて、コロナで外に出られない時に関連の本を読んで、それを実践していました。道歩く時、「次の角を曲がったら女性が来る」とか念じて、よし、当たったぞとか(笑)

―― 大事です(笑)それにしても、コロナの影響で劇場公開できないと最初に聞いた時はどのように思いましたか。

黒澤 もうコロナ、コノヤローっと。許せない!という気持ちです。
ただ、どんなメジャーな作品でも公開延期になってしまっていたので、致し方ないのかな、とも思いました。

―― でも協力してくださったみなさんにも、告げないといけないじゃないですか。どうされたのですか。

黒澤 言いたくないと、逃げたくなりました。
ただ、心を鬼にして、申し訳ないと頭を下げました。

―― これは相当傷ついたというか、でもある意味、精神的にちょっとタフになるきっかけにもなりますよね。

黒澤 はい、立ち止まってはいけない、と思いました。

役者として決まってた作品も撮影が延期になって、この先仕事があるのかなという、不安の時期でもありました。ただここはもう、吹っ切るしかないと。

まずはYouTubeで何かできないか、とか、そういうところから調べまくりました。
当時いろいろなアーティストが配信ライブをされている中で、自分も俳優としてもプロデューサーとしても、何か今できることをやらなきゃ駄目だと思いました。

この頃アイドルグループの嵐さんも、YouTubeで「リモート紙芝居」という企画をやっていていました。
活動休止前で盛り上げていかなくてはいけない時期、ライブも開催できず心苦しかったと思いますが、その中でまずは出来ることからと、リモート紙芝居で読み聞かせをするという企画をされていて、すごく感動しました。

嵐さんがやってるなら、自分も頑張らなくてはと思って、そこからさらに、心を強く、配信公開に向けて交渉に挑みました。

―― 映画を作る立場で、作品が映画館で公開されずに配信公開されることは、どのようにお考えですか。

黒澤 難しいですよね。やはり大きい劇場で観てもらうために撮ったものなので、それはやはり、映画館で観てほしいという気持ちはあります。

ただ、コロナでこういう状況になって、配信は本当にすごいなと思いました。

例えば、私の祖母はもう高齢なのですが、祖母が家で自分の映画を観ることができるというのは、非常にありがたいなと思って。

―― それは確かにそうですね。

黒澤 こういった側面もあるので、配信もいいなと今は思います。

この学生製作の映画で、Amazonプライム・ビデオで配信を実現させた先駆けとして、多くの学生や映画エンタメを志してる方たちが、より自分の作品を発表できる場がもっと増えてほしいと思います。

―― 完成披露試写会での、メディアに掲載された時の反響とか、ご覧になられた方のお声はいかがでしたか。

黒澤 いろいろなメディアの方に来ていただいて、取り上げていただきました。
クオリティ的には未熟な部分もあるとはいえ、お声を聞く限り、映画好きな方々にはしっかり届けられたかなと、実感しています。

―― クラウドファンディングのお話でもそうでしたが、いろいろな方からの温かいお声も含めて、ひとつの作品を残せたというのは、すごい感動しますよね。

黒澤 形になるって、本当に嬉しいです。

もちろん、ここはもっとこうすれば良かったのかなというところもありますが、それはそれで、今の未熟な僕たちが先を見つけることができたということなので、次回に向けて、より成長していくためのきっかけにしたいと思います。

―― 最後にあらためて、映画「色の街」の公開について、読者にメッセージをお願いします。

黒澤 映画「色の街」、Amazonプライム・ビデオで、インディーズ配信ではありますが、この作品がきっかけで映画に興味を持っていただき、映画ってこんなに楽しいんだ、そして今日の記事をきっかけに自分にでも作れるんだと思ってほしいです。皆さん、ぜひ観てください。

(インタビュアー:山口義徳)

映画「色の街」

ラッパ屋やキャラメルボックスを輩出した早稲田大学の学生劇団「てあとろ50’」出身の森平周と黒澤優介が、映画製作に初挑戦。学生演劇をはじめ多くの小劇場で活躍する俳優が幅を広げて活動するきっかけにと製作された。
ヒロインにはフジテレビ「ワイドナショー」準レギュラーほか、CM・広告8社に出演中の矢崎希菜。また演劇倶楽部出身で現在ドラマや映画で大活躍中の小手伸也が特別出演。
製作スタッフには城西国際大学の学生らが集結。
「ありのままでいること」について過去と現在を交錯して描く青春短編映画となっている。
2021年3月20日(土)からAmazonプライム・ビデオで配信中

黒澤優介

1997年5月2日生。キャラメルボックスやラッパ屋を輩出した早稲田大学の「劇団てあとろ50′」に入団後、俳優・脚本家として活動。2018年、「隣の家族は青く見える」(フジテレビ系)でドラマデビュー後、「チア☆ダン」「キワドい2人-K2-」(ともにTBS系)、「特捜9 season3」(テレビ朝日系)、「NTTドコモ」「魔剣伝説」等に出演。また昨年出演したTBSラジオ「たまむすび」にて、広告代理店で働きながら俳優活動していることを公言している。

1 2

3

関連記事

ページ上部へ戻る