【小泉今日子インタビュー】デビュー40周年!デビュー記念日に行なわれたライブと、主演映画・舞台で織り成す1週間の大特集!【WOWOWオンデマンド】

『デビュー40周年!小泉今日子特集』でオンエアされる映画作品は、冒頭に撮り下ろしの本人コメントを収録、大きな見どころとなっている。以下、そのほんの一部ではあるが、テキストでお届けする。

『快盗ルビイ』

ルビイは職業がスタイリストで、ミステリーが好きで、自分の人生の中に何かキラキラ光るものを見つけたい、という女の子。監督の和田誠さんはもちろんイラストレーターとしても巨匠ですので、絵コンテが完璧なんですよね。そこに描かれたかわいらしい女の子のムードを、どうやったら実存する人間として表現できるかな?と考えながら演じていました。真田広之さんは、ルビイが巻き込んで共犯者にしていく相棒で、冴えないドジな男の子の役。尊敬している先輩ですし、撮影中は演技について二人で話し合う時間をたくさんつくってくださって。ルビイという役をかなり導いていただいて、ありがたかったです。

『ボクの女に手を出すな』

『生徒諸君!』はアイドルの主演映画として王道だったと思うんですけど、主演二作目の今作は、監督が中原俊さんで、オリジナルの脚本で、しかも私が演じたひとみは社会のダークサイドを何となく感じている女の子。「やりがいがあるな」という想いがありました。共演させていただいた先輩方は、もちろん石橋凌さんはものすごくカッコいいロックシンガーですし、山田辰夫さんも森下愛子さんも、インディーズの映画を支えてきた人たちだったんですよね。私もそういう映画が大好きだったので、演技をご一緒できることにワクワクして現場に臨んだ記憶があります。

『グーグーだって猫である』

大島弓子さんは私が子どもの頃から一番好きな作家さんで、尊敬しているし、自分の細胞や血、肉に入り込んでいる存在。オファーをいただいた時は、好き過ぎてあまり近付きたくない気持ちもありながら、他の人が演じるのを想像するとそれもちょっと嫌で。それで出演する覚悟を決めた、というのはあります。映画の中ではグーグーという一匹の猫が小さな時から大きくなるまでが描かれますが、実は5、6匹いてユニットを組んでいました(笑)。撮影中にスタッフの皆に猫愛が生まれてしまい、撮影後は全部のグーグーをそれぞれにお家へ連れて帰って、家族になっていました。公にお姿を見せない大島さんが、手塚治虫文化賞の短編賞を受賞された時、この劇中のスタイルで私が代理受賞をしたんですね。ご本人からいただいた「代わりに受賞をしてきてほしい」というお手紙を読みながら、「やっとご恩が返せる」と号泣しました。それは、女優とか歌手としてではなくて、人間・小泉今日子としてすごく重要な出来事でした。

『毎日かあさん』

西原理恵子さんも実在する人物ですし、続けて漫画家さん役のオファーだったんですよね。西原さんのエッセイ漫画のファンで読んでいましたので、漫画だと過激に描かれているけど「きっと実生活、実人生では普通の母の時間、妻の時間、女の時間が流れているんだろうな」と想像していて。お引き受けして、そこを覗いてみたかったというのはあるかもしれません。ある日小林聖太郎監督から、「カモシダさん役に永瀬正敏さんはどうだろう?」と相談されて、「ピッタリじゃないですか?」というお話をしたんですね。共演したことは過去にもあったんですけど、このようにガッツリと組むのは初体験で。「あ、こういう役者さんなんだな。いい俳優さんだな」と思いながら現場を観ていました。二人の子役さんたちが夏休み中で、カメラが回っていないところでも1カ月ちょっとずっと一緒に過ごしていたので、それだけでもう「大変だな」と。疑似体験ながら気が遠くなる感じがして……(笑)。子育てに関わる全ての方たちに対して、改めて「ご苦労様です!」と思いました。

『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』

井上荒野さん原作で、死の床に就く艶という女性を中心に、薄い膜を通して繋がりのある女性たちをオムニバスで描いた作品でした。私は小説家の妻・石田環希を演じているんですが、夫の愛人役の荻野目慶子さんと文学選奨の受賞パーティーでキャットファイトするシーンがあるんですね。環希は白っぽい着物を着ていて、(ワインをぶちまけるなどして汚れるため)「何度もできない」と言われましたし、しかもワンカット長回しだったんです。慎重に、かつエキサイティングなシーンにしなければいけないから、スローモーションみたいに一個ずつ動きを確認しながら脳みそはフルスピードで動いている、という感じで撮影しました。完成披露で初めて女優陣がズラッと並んだんですけど、エネルギーが圧巻というか、あっぱれで。その中に艶の夫役・阿部寛さんが一人いらして、「あぁ、こんな中でも阿部さん、負けないなあ」って。そんな印象を受けた記憶があります。

『贖罪 インターナショナル版』

湊かなえさん原作×黒沢清監督というのは想像もしていなかったので、面白い企画だと思いました。私の演じる麻子は罪を追い掛けていって、やがてそれがブーメランのように自分に返ってくるという、恐ろしいお話です。最初は『連続ドラマW』としての制作だったので、若い4人の力のある女優さんたちのエピソードが各回にあり、その方たち一人一人と対峙して芝居できるのは楽しみでもありました。黒沢監督は、この前に『トウキョウソナタ』でもご一緒したんですが、たくさん言葉でお話をしなくても一言で分かり合える瞬間のある方なんですよね。私は若い頃からフランス映画がすごく好きで、ジャンヌ・モローであるとか、憧れていたヒロイン像に限りなく近いキャラクターを黒沢映画の中で演じることができたのはすごく楽しかったですし、面白いことでした。

40年におけるターニングポイントを尋ねると、表現者としての幅を広げるいくつもの分岐点をもたらした恩人たちの名前が挙がった。

「何人かの映画監督や演出家が浮かびますね。まずは久世光彦さん。『連続ドラマW』第一作目が『センセイの鞄』(久世光彦演出、小泉今日子主演)だった記憶があります。久世さんには私が十代の時に出会って、俳優としてどうするべきか?ということ、女の子としてどういう行動が素敵か?ということ、文章を書くことも含め、扉をいろいろと開いてくださった恩師。その後、今回は特集のラインナップに入っていないですけど相米慎二監督、先ほどお話した黒沢清さんですとか、また新しいドアを開いてくださる演出家、監督に出会っていったことも大きかったです。それから、宮藤官九郎さんのように、年下ながら、また違うドアを臆せずバン!と開けてくれる方もいらっしゃって。音楽のほうも全部同じで、いろいろな人にドアを乱暴にバンッ!と開けてほしいですね」

 扉の先に広がる未だ見ぬ世界に飛び込み、新しい自分に出会い続けていく――ベテランなのに小泉がフレッシュさを保ち続けている鍵がそこにあるように思えるが、やりたいことを絶えず見つけ発信し続けていく、その原動力は何なのだろうか?

「発信するのが好きなのは、私は受け取るのも好きだからだと思うんですよ。子どもの頃からテレビや映画、歌や文学作品にいろいろな影響を受けて、大島弓子さんの話もしたように、それが本当に自分の人生を助けていったし、自分という人間をつくりあげていく中で全てが欠かせないものとなっている。その結果が今ここにあるんですね。キラキラしたものに触れるとうれしくて、チャージされた私がまた溜まったものをブワッと出したくて発信する、という循環がずっと止まらないんだと思う。それが一番の原動力なんじゃないかな?と思います。ミーハーだしオタク度がすごく高いので、カルチャー全般にすごく興味があって、それを受け取る楽しみをすごく私は知っていて。だからこそ『こうしたら喜んでもらえるかな?』という気持ちにもなるし。ずっとそれを続けられているのは、コンサートのMCでも言ったけど、受け取ってくれる人がそこにいてくれるからで。全てが循環している感じはあります」

今回のツアーでは、アンコールの1曲をスマートフォンで撮影、SNSでの拡散をOKとする初の試みも取り入れた。海外では一般的であり、「そのお陰で、好きなアーティストのライブをその日の内に観られたりするわけなんですよ」と小泉は興奮気味に語り、エンターテインメントの“視聴者”としての感受性から生まれた企画だったと明かす。

「『1曲だけ』というのも最初から構想にあったんですけど、どの曲にするかは決めていなかったんです。スタイリストの堀越絹衣さんは『快盗ルビイ』でもご一緒した方なんですが、アンコールの衣装のTシャツを全ステージ分、15パターンつくってくれたんです。ということは、毎日画像をアップしていったら、いつか誰かが『これ、全部違くない?』と気が付くから面白いねって。それで、アンコールの1曲に絞りました」

オンエアされる中野サンプラザ公演のアンコールには、爆風スランプの「東の島にブタがいたVol.3」(※小泉への提供曲を後にセルフカバーした、歌詞の異なるヴァージョン)を選曲。そこには、ある切実なメッセージが込められていた。

「元々は『東の島にブタがいたVol.2』という私の曲をセットリストに入れていて、そちらは『三匹のこぶた』みたいな、かわいい内容の歌詞なんですね。爆風スランプさんの『~Vol.3』のほうは反戦歌なんですけど、何となく気になって準備はしていて。そうこうするうちに、ツアー中にロシアがウクライナに侵攻し、本当に戦争が始まってしまって……広島公演から差し替えたんです。やはり日本は唯一核爆弾を経験している国なので、そこは大きな声で訴えてもいいのかな?って。たまたまその曲を選んで準備していたことも、その曲にその歌詞があったことも運命なんだろうなと思うし。サンプラザ中野さんがつくってくださった曲を中野サンプラザで披露したのもまた、運命なんだろうなって(笑)。そう思いますね」

ツアー開催にあたって、小泉がしたためた「16歳だった私はどんな未来を夢見ていたのか。 望んだ未来に今の私は立っているのか。 2022年40周年を迎える私は、その答えを探しに旅に出ることにしました」とのコメント。ツアーを終えた今、手にした答えとは? 

「望んだ未来に、あのコンサートがしてくれた感じがします。ここに辿り着く間に、サボッていたこともいっぱいあるだろうし、間違ったこともいっぱいしたろうし、罪も重ねてきたかもしれないけれども。このコンサートを頑張って、少しそれが薄くなった、という感じかな? 過去を変えることは難しいかもしれないけど、あの地点から、私の未来を変えることができた。ファンの皆さんも、また一緒に船に乗ったような感じはしましたね」

最後に、WOWOWで『デビュー40周年!小泉今日子特集』をご覧になる視聴者へ、メッセージを。


 「まず、WOWOWさんに加入しないと観られないですよね(笑)。私自身、実は一度お別れした時期があったんですけど(笑)、最近またよりを戻しております。グラミーやアカデミー賞も中継を観られますし、ほかでは配信されていない新しい映画、渋い映画、いろいろな国の映画を観られますし、音楽のライブも本当にたくさん観られます。最近はVaundyのライブを録画して観ましたし、そうかと思えば野口五郎さんと岩崎宏美さんのジョイントコンサートだとか、中森明菜さんの過去のライブも観られたりするんです。ぜひ、WOWOWさんと縁を結んでいただいて、その中で私の特集も観ていただけたら(笑)。初期の作品ですとか、出演していても細かい部分を忘れてしまっていることもあるので、私もこの機会に観て復習します(笑)」

文:大前多恵/写真:田中聖太郎

デビュー40周年!小泉今日子特集

小泉今日子 TOUR 2022 KKPP(Kyoko Koizumi Pop Party)
2022年5月28日(土) 午後7:00 <WOWOWプライム><WOWOWオンデマンド> ほか

小泉今日子

こいずみ きょうこ
1966年2月4日生まれ(58歳)。神奈川県出身。

1

2

関連記事

ページ上部へ戻る