【中井友望】「これ以上ない初主演作品」―映画『サーチライト-遊星散歩-』で考える家族との関係性

映画「サーチライト-遊星散歩-」(2023年10月14日より全国順次公開)の主人公・果歩を演じられた中井友望さんへの特別インタビューをお届けします。難しいテーマの作品に対してどのように演じられたか、また中井さん自身が困難な状況に直面したときのことや家族についてなども語り尽くしていただきました。

――中井友望さんのHiRTo登場はもう2回目ですね。前回のインタビューも非常に好評だったので私としても嬉しかったですし、中井さんの魅力も伝えられたんじゃないかなと思っております。

そして今回は非常に難しいテーマの作品ですがこの主人公「内田果歩」とはどのような人物なんでしょうか?

こういう作品なので、テーマに社会問題など描かれていることは色々とあるんですけど、そんな何か特別難しいことを考えてほしいわけじゃなくて、「果歩」っていう女の子がいてこういう生き方をしていて、それでも普通に幸せに暮らしたいだけでそんな大それたことじゃないって、このようなテーマだからこそ思ってます。

――なるほど、そのように演じられたということなんですね。平波亘監督自身も難しいテーマを作品にされて、中井さんに演じてもらったのが本当に一番はまっていたと書いてありました。私自身も映画を見ていてどんどんのめり込んでいくというか、なんか助けてあげたいなと思いました。

映画ではお母さんが若年性の認知症という役ですが、認知症については勉強などされたんでしょうか?

私の周りには認知症の方は実際にはいなかったのですが、だからといって調べて知識をつけてっていうよりは別に何も知らないままでいいのかなって。果歩はお母さんが認知症ということをあんまり信じたくないというか、そう思って暮らしているわけではないですし。

――確かに娘の心としては知りたくないというかそういう病気だと思いたくないという心情が先立ってましたよね。

そうです、実際本当に認知症だって気づいてたのかもしれないしお母さんの行動に違和感はあったんだろうけど、果歩はそれが認知症なのかっていうのはわかってなくてもいいかなって。お母さん役の安藤(聖)さんは勉強というか監督と話し合っていましたね。

――ナイーブな問題を抱えている作品なので役作りは大変かと思いました。実際、世の中には多くの同じような悩みを抱えているような方もいらっしゃると思うんですけど、この作品を通じてそういった方々に何か伝えたいことってありますか?

そうですね。同じ悩みを抱えている人に伝えたい、というよりはその周りの人とかに観てもらいたいです。この作品はフィクションじゃないですか。本当にそういう環境にいる人にとっては救いになるかっていうとそうじゃないのかもしれないけど、周りにいる人たちがこれを見たときに、こういう環境の人がいるっていうことを知るきっかけになる映画になればなと思います。

――確かに答えを出している映画ではないですからね。では、これは映画とはちょっと違うかもしれないですけど、今まで中井さん自身が困難な状況に直面したときどんなふうに対処してきたか、なにかいいやり方ってあったりしますか?

まだ正解は見つかってないですけど……どうしたらいいんだろうなって日々思ってますね。もうじっと堪える。自分のことって自分でしか解決できない。環境が悪いのなら他の人の助けで解決できたりするけど、私が普段持ってる悩みって基本的に自分でしか解決できないことが多いので人に相談するとかじゃない……耐える。ぐっと堪える。とりあえず抗わない。今はしんどい時だっていうのを受け入れる。

――なるほど、それもいいやり方ですよね。そういうことを受け入れた後、立ち直るのは早い方ですか?遅い方ですか?

遅いかもしれないです。結構引きずりますね。寝たら忘れるとかもないですし。

――でも女優さんだから心の移り変わりを知ってると演技にも活かせたりできると思うので、中井さんは演技に深みのある方だからいいんじゃないかなと思いました。

お母さん役の安藤聖さん、クラスメイトの上野役の山脇辰哉さんの演技に対してはどういうふうに感じ、どういう気持ちで対応したのでしょうか?

お母さん役の安藤さんはすごく気持ち的な部分を引っ張ってもらったなっていう感じで、しんどいシーンのときは本当にすごいしんどかったですね。でも撮影以外はすごく明るくてあっけらかんとしてる方で本当にお芝居の中で引っ張ってもらったなっていう印象です。

逆に山脇さんは何やっても受け止めてくれる、受け入れてくれるような安心感があったので、最後に役として果歩が上野君にさらけ出すのもすごいけど、実際に私が山脇さんにあんなにさらけ出せるって、すごく相手のこういう(両手を広げて)心の何かがないとできなかったのかなと。それを無意識のうちに与えてくれていたんだろうなって思います。

――窮地の場面で助けに来てくれるなんてあんな人なかなかいないですからね。本当に正義のヒーローかっていうぐらいでしたもんね。

今回の作品のテーマが家族ということで中井さんにとって家族とは何でしょうか?

簡単なようで一番難しい関係性だなって。コントロールができない、理性がきかない絶対的な関係だってどこかで思ってます。実際、私は人に向ける言葉をすごく考えてから喋ったりするんですけど、家族に対しては先に口が出ちゃうからなんかひどいこと言ったかもって思っても直せない。でもそれって何かよくないけどいいこと。気にしたことなかったけど、この作品を通じて気にするようになりました。

――では中井さんにとって「サーチライト-遊星散歩-」とは?

すごい難しい質問。……これ以上ない初主演作品だと思います。

――では最後にメッセージをお願いいたします。

ぜひ劇場で映画を観てほしいです。すごく大きい作品ってわけじゃないから観てくださった方1人1人の声だったり感想がすごく嬉しいので、こういう作品があるっていうこと、こういう世界があるっていうことを1人でも多くの人に知っていただきたいです。

――ありがとうございます。

インタビュアー:山口義徳

中井友望

なかい とも
生年月日:2000年1月6日(24歳)
出身地:大阪府出身
血液型:B型
身長:158cm

オーディションプロジェクト「ミス iD2019」で、3500名の中からグランプリを受賞。2020年、TVドラマ「やめるときも、すこやかなるときも」(日本テレビ)でドラマ初出演。主人公の初恋の相手を好演し、一躍注目を集める。その後、主な出演作として、映画『COMPLY+-ANCE コンプライアンス』(2020年/齊藤工総監督・岩切一空監督)、『かそけきサンカヨウ』(2021年/今泉力哉監督)、『シノノメ色の週末』(2021年/穐山茉由監督)、『ずっと独身でいるつもり?』(2021年/ふくだももこ監督)、『少女は卒業しない』(2023年/中川駿監督)、『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』(2023年/阪元裕吾監督)、『炎上する君』(2023年/ふくだももこ監督)などがある。舞台やアーティストのミュージックビデオにも多数出演し、音楽×映画の祭典「MOOSIC LAB [JOINT] 2021-2022」のイメージキャラクターも務めた。今年の9月に開催された、第15回下北沢映画祭では、出演作の短編映画「LIKE THAT OLD MAN」(こささりょうま監督)が多数の賞を受賞。また、ドラマ「君には届かない。」(TBS/毎週火曜・24:58~)に出演中。11月12日スタートの「OZU~小津安二郎が描いた物語~」(WOWOW/毎週日曜・22:00~)の第3話『非常線の女』にも出演。


映画「サーチライト-遊星散歩-」

2023年10月14日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開

  • 監督:平波亘
  • 脚本:小野周子
  • 音楽:合田口洸
  • 出演:中井友望、山脇辰哉、合田口洸、都丸紗也華、西本まりん、詩野、安楽涼、水間ロン、大沢真一郎、橋野純平、安藤聖、山中崇

あらすじ:

一見普通の女子高生である内田果歩が、病を患った母・貴子との 暮らしを守るために奔走する物語。

若年性認知症を発症した母親を抱え、貧困に陥った女子高生・果歩は生活に困窮し、スマホも利用停止となってしまう。そんな中、大家族を養うためにバイト生活を送る同級生の輝之は、果歩の事情を知って気にかけるが、果歩はやがて禁断の「JK 散歩」の世界に足を踏み入れていく…。

果歩が駆け抜ける街の空をサーチライトの光が射す—。

それは未来が見えない境遇の少女の道筋を照らす光なのか、それとも…。

©2023 「サーチライト-遊星散歩-」製作委員会


  • ヘアメイク:横山雷志郎(Yolken)
  • スタイリスト:粟野多美子

衣装

イヤカフ 18,000円、ネックレス 70,000円、リング 32,000円/ブランイリス(ブランイリス トーキョー)  靴 ¥16,000/ダイアナ(ダイアナ 銀座本店)(全て税抜) その他スタイリスト私物

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